終了しました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。
宇宙からみると、どの星も瞬かないといいます。
地球にある大気が影響して、太陽系の惑星以外の星は瞬いてみえるそうです。僕らは地球に住んで、夜空を見上げて、当然のように瞬いている星を眺めています。
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僕は江戸後期だと曾我蕭白、長澤蘆雪、伊藤若冲、酒井抱一、鈴木其一あたりの絵師が好きです。その当時の京都では円山応挙が人気だったようで、”それまでの日本の絵画にはないような写実的な絵”として一世風靡していたそうです。最近まで、僕は応挙について「うまいけどなぁ」というのが正直な感想でした。若冲や抱一はうまいし絵としても家を彩る調度品としても優れていると思います。ただ、実際に薄暗い町家に身を置いて長い時間過ごしてみると「応挙って凄いかも、、、」と思うようになりました。
思うに、若冲などは美術館/博物館のような“陳列”に耐えうる作品、欧米の創り上げた“絵画”と同じように鑑賞できそうな作品で、周りの環境に左右されず鑑賞した時に絵だけで見ることができる力があるのかもしれません。そして、それらの作品ももちろん、町家やお寺のような空間でも耐えうるものがほとんどだと思います。でも、多くの江戸後期までの作品は、町家のような薄暗さや蝋燭のようなか細い灯り、現代で言うと家具や壁紙のようなしつらえのひとつとして鑑賞(または眺められる)ことを当然として作られていたんだ、と気がつきました。
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町家のような“作品のための展示スペース”“鑑賞のための場”とはいえない場所で、日本の絵画は鑑賞し、そこに合わせて作られてきました。それは、現在では一般的な作品の鑑賞の場や方法とはいえません。ただ、一般的でなくても、スタンダードでなくても近代までの我々日本人はそのように作品を見つめてきたんだ、と思うと作品の作り方や見せ方、見方も変わる気がしています。
江戸時代に描かれた屏風を、フラットな平面に描かれた絵画のように平坦にして均一な照明を当てて展示すれば描かれているモノはわかりやすくなります。でも描き手も、依頼者もそのようなモノを求めてはいなかったはずです。庇の長い日本家屋で薄暗がりの中にほのかに光る箔の煌めきや日中の明るさでは決して見ることのできない墨の深い色合いなどは、美術館やギャラリーでは垣間見ることすらできないものだと思います。
作品を見るためだけに作られた照明、壁、清潔感といった空間ではなく、生活の中から生まれた日本絵画を、体験も含めた作品であったり、展覧会にしたいと思い、今回の展示に挑みました。
決して美術館やギャラリーのように作品だけが見やすい空間ではありません。
ただ、その当時に戻れない以上、シミュレーションを通して体験し、自分の糧にしたいと考えています。
それはグローバルスタンダードな鑑賞方法ではないかもしれませんが、地球ではなく宇宙から星を眺めるように、それは瞬かなくてもおなじ星で、それぞれの美しさがあると信じています。
品川 亮
展覧会概要
品川亮個展「瞬かない星を眺めて」
日時 2020年12月18日(金)-12月20日(日)
※日時指定予約制 予約はこちら
※日によって時間が異なります。
会場 庵町家ステイ 三坊西洞院町家
入場 入場無料
後援 一般社団法人 美術検定協会